主な発表論文の概要

希少菌Lactobacillus farciminisの遺伝子解析

Draft genome sequence of Lactobacillus farciminis NBRC 111452, isolated from kôso, a Japanese sugar-vegetable fermented beverage.
Geneome Announcements Vol. 4, Issue 1, e01514-15, 2016
野菜黒糖発酵液から分離した稀少な乳酸菌Lactobacillus farciminis(ラクトバチルス ファルシミニス)菌の遺伝子(ドラフトゲノム)解析結果についての論文発表を行いました。この菌種の発見は比較的新しく、1983年にロイター(G Reuter)らにより分離されました。この論文では、Lactobacillus farciminis NBRC 111452 に約2500種の遺伝子が存在すること、また、この菌株の特徴として、無機窒素代謝に関連する遺伝子を有すること、コラーゲンの代謝・再利用に関連する遺伝子を有することを明らかに致しました。

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ビデオマイクロスコープを用いた顔面の毛穴解析
-方向性と力学的異方性との関連-

ランガ―ライン(皮膚割線)イメージ図

ランガ―ライン(皮膚割線)
イメージ図:赤線
皮膚に円形の傷をつけると、皮膚の張力が強い方向に楕円形に広がります。この長軸方向を図示したものをランガ―ライン(皮膚割線)といいます。

Journal of Society Cosmetic Chemists Japan, 50(4), 321-328 (2016)
顔面の毛穴について、その方向性と力学的異方性に関する研究を行い、学会および論文にて発表を行いました。
新規に共同開発した毛穴形状解析ソフトを用い、ビデオマイクロスコープで撮像した画像について方向性を検討した結果、顔面6部位(額、顎、左右頬(鼻横および鼻唇溝横))における毛穴の方向は、ランガーラインと呼ばれる皮膚割線の方向に沿い、顔の正中線に対して左右対称であることを明らかに致しました。(皮膚割線とは、皮膚に円形に傷をつけると楕円形に広がるのですが、その長軸の方向を示したものです)。
また、CutiScanという機器を用いて顔面各部位の力学特性を調べたところ、皮膚が変形しにくい方向(力学的異方性)と毛穴の方向およびランガーラインとは対応することがわかりました。
さらに、4週間のスキンケアによる毛穴形状の変化を調べた結果、角層水分量、経表皮水分蒸散量(TEWL)の改善と共に毛穴面積は小さくなる傾向があり、方向性には変化がないことを明らかに致しました。

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野菜黒糖発酵液の発酵過程における菌叢変化

Changes in the bacterial community in the fermentation process of kôso, a Japanese sugar-vegetable fermented beverage.
Biosciences, Biotechnology, and Biochemistry, 81: 403-410, 2017
野菜黒糖発酵液の発酵過程で出現・消失する微生物叢の推移を次世代シークエンサーという機器を用いた解析結果についての論文発表を行いました。自然発酵により、乳酸菌が短期間で優勢になること、バッチごとの菌叢パターンが安定していること、乳酸菌の中でも菌種の入れ替わりがあることなどを明らかに致しました。

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リナカンシンCの脳への働き

Rhinacanthin C alleviates amyloid-β fibrils’ toxicity on neurons and attenuates neuroinflammation triggered by LPS, amyloid-β, and interferon-γ in glial cells.
Oxidative Medicine and Cellular Longevity, Volume 2017, Article ID 5414297
白鶴霊芝の主要な生理活性物質であるリナカンシンC(rhinacanthin C)の新しい機能性についての論文発表を行いました。アルツハイマー病の原因物質のひとつとされるアミロイドβによる神経傷害をリナカンシンCが抑えることを見出しました。さらに、神経細胞周囲に存在するグリア細胞の一種ミクログリアからアミロイドβの作用で放出される炎症因子(IL-6、TNF-α)をリナカンシンCが抑えることを見出しました。これにより、リナカンシンCに神経を保護する作用、および神経炎症を抑える作用があることが明らかとなり、神経系培養細胞評価系において、認知症予防に繋がる可能性が示唆されました。

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野菜黒糖発酵液から単離した新種乳酸菌 Apilactobacillus kosoi

野菜黒糖発酵液から単離した新種乳酸菌

新種乳酸菌 Apilactobacillus kosoi の電子顕微鏡画像

Lactobacillus kosoi sp. nov., a fructophilic species isolated from kôso, a Japanese sugar-vegetable fermented beverage.
Antonie van Leeuwenhoek, published online on 20 January 2018
野菜黒糖発酵液から分離した新種の乳酸菌に関する論文発表を行いました。分離源にちなんで、Apilactobacillus kosoi(アピラクトバチルス コウソイ)と命名・提唱致しました。この新種の菌は、野菜黒糖発酵液の発酵過程で出現してくる優勢乳酸菌です。この論文では、Apilactobacillus kosoi と既知乳酸菌との微生物学的・生物化学的特徴の違いについて明らかに致しました。

アピラクトバチルス コウソイの新種登録
ラクトバチルス属細菌は、乳酸菌の代表的な菌種であり、現在260種あまりが知られています。このたび、野菜黒糖発酵液の優勢菌として、新種の乳酸菌アピラクトバチルス コウソイ(Apilactobacillus kosoi)を発見いたしました。
アピラクトバチルス コウソイは、2018年1月にAntonie van Leeuwenhoek誌に新種として発表、2018年9月に、国際認証機関IJSEM(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology)の認証リスト(Validation List No. 183)に掲載され、正式に新種として登録されました。
食品のジャンル名が付いた乳酸菌は他にあまり例がなく、日本の伝統食品を世界へ発信する思いを込めて命名いたしました。

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